夏果

日常の思いと創作など

白い空。灰色の正方形の小屋。

 

湿った夜だった。

すりガラスの中から雨音を聞くのが心地よかった。

 

「雨脚が弱まるか強まるかでハイローした話は過去のことだろ?」

「そんな話掘り起こさないで」

「粋人になりきれないのはお互い様だ」

彼女は頷く。

 

「でもこの雨は10分後には弱まる。5000円かけてもいいね」

「私もそう思う」

「同じ方にベットしたら賭けが成立しないよ」

 

「いつものことか」

 

僕らは誰にも観測されない小屋にいた。

天気を正確に捉えることしか、外とまじわる術がないかのように。

 

ただただこの体温に脳を溶かしていていいのだ。

何も考えず雨音より大きなノイズを奏でていればよい。

 

賭けなんて忘れている。

僕らなんて所詮そんなもんだった。

 

起きると朝で、歯を磨いて支度をすると、僕らは小屋を出た。

雨上がりの曇天。昨日までと何も変わらない空のように見えた。

 

2023年9月25日 1時23分